(以下、208は初期型の1.2L NA+5MTを指します)
発進。クラッチのミートポイントが相当奥でつながる。
208が逆に相当手前でつながるものだから、ギャップに戸惑う。
1速はかなりのローギア、ちょっと動かしたらもう2速で良い。
というか感覚的には2速が「1.5速」という感じで、
渋滞を極低速でのろのろ進むような場合には2速で行ける。
走り出してすぐに感じるのは、異常なまでにどっしりとした足回りだ。
腰から下が物凄くどっしり、がっしりしており、「ドーーン!」と走る。
シャシー下に電池を格納しているEVかと思うほどだ。
1130kgという車重以上の重さを感じる。
「重い」と書いたが、動力性能が足りないとか
操舵感が重々しいという意味ではない。
文句なしの直進安定性、安定感・安心感があるということ。
ボディの剛性もバッチリでミシリとも言わない。
ステアリングの操舵感は結構重めで、スプラッシュを彷彿とさせる。
足回りの感覚ともマッチしており不自然な印象はない。
2速で加速しているとすぐに4000回転あたりまで回ってしまうが、
全然うるさくなく、気が付かないほどだ。
「2気筒エンジンは、エンジン音はよく聞こえてくるが、
そのエンジン音が気持ちよく、不快ではない」
と予想していたのだが、エンジン音自体が相当にシャットアウトされている。
つまり静かなのだ。これは予想外だった。
ブロロロ・・・という独特の音が聞こえるのは2000回転以下で、
それは発進時か高速巡航くらいしか使わないゾーン。
普段は2000~3000あたりを使うのだが、ハッキリ言って2気筒と分からない。
エンジンの音質も、聞こえてくるのはかなり低い音だけで、
中域~高域の周波数は本当にカットされている。
208は2速3速で3000回転も回すと中域の音が聞こえてくるから、
パンダのエンジン遮音は徹底されている。
ガラスの厚みは208と同等くらいありそうで、ボディ剛性ともあいまって
外からの音もきちんと遮音されているから、
トータルの静粛性ではパンダは208と同等かそれ以上かもしれない。
わずか1900回転で145Nmというスペックは、低回転だけで見れば
自然吸気の1.6リッター以上であり、車重1130kgには相当パワフル。
ちょっとした登り坂もスルスルと登っていく。
208も118Nm/2750rpmで1.4リッター並み、車重1070kgに対しては
十分なパワーだとは思うが、それ以上の余裕を感じた。
しかも4000とか回しても全然うるさくないし、
燃費も大して悪化しないだろうから、あえて低回転を使う必要がない。
普段は2000~3000あたりを使っていれば、
快適だしパワフルだしで、かなり運転しやすい。
高速道路も運転させていただいた。
100km/h巡航では6速、2800回転。
エンジン音も風切り音もほとんど聞こえず快適。
208の100km/h巡航は5速で3000回転だがこちらも快適。
快適性は、互いに高い水準で互角という印象。
少し勾配があるところでアクセルを踏み増した時の音質が違っていて、
「ブロロロ・・・」という野太い低音が響くパンダに対して、
208は「ガラガラ・・・」というディーゼルっぽい音が聞こえる。
不快でないのはパンダの方だ。
80km/hになっても6速のままで行けるが、回転数が2200くらいまで
下がってきて、少しこもり音が聞こえてくる感じ。
5速に落とすと3000回転になり、こちらの方が快適かもしれない。
6速ギアの守備範囲を書いてみると、
パンダ 208
1速: ~ 7km/h ~12km/h
2速: 7~15km/h 12~25km/h
3速:15~30km/h 25~45km/h
4速:30~50km/h 45~65km/h
5速:50~80km/h 65km/h~
6速:80km/h~
こんな感じだろうか??
もっとも、パンダは回してもうるさくないから実際は上側はもっと使える。
そういえばずっとエアコンONで走行していたが、
エアコンによるパワーダウンはほとんど感じないとのことで、
実際運転していても非力感は全くなかった。
208はエアコンつけるとパワーダウンははっきりとあり、
特に2000回転以下がスカスカになるから運転しにくくなるんだよなぁ、
早くエアコン不要の時期が来ないかなぁと思っている。
燃費は街乗りで12~13km/l、高速だと15~16km/lくらいだそう。
208は高速だと20km/lに迫るくらい。
ここはトルクアップや4WDという点を考えれば妥当なダウン幅かと。
小柄なボディ、875cc、「パンダ」というかわらしい名前、
柔和な顔つき、スクワークルをモチーフにしたポップな内装、
そういった要素に惑わされてしまうが、
パンダは実は超骨太で快適で長距離もガンガン走れる「ツアラー」だった。
「静粛性・快適性では208、楽しさでパンダ」
という僕の前予想は全く外れた。
パンダは静粛性も快適性も楽しさも全て兼ね備えていた。
「ちょっと安っぽい、250万円はちょっと高い」
とも思っていたが、剛性感、安定感、快適性、そしてパワー、
いくつもの要素が高次元で実現されており、価格に見合っていると思った。
というか同じような車が他に思い当たらない。
パンダにしかない「価値」、それをしっかりと見させてもらった。