208に乗り込んで目に飛び込んでくるのは、208のアイデンティティにもなっている、
小口径のステアリングホイールとインパネ上方に張り出したメーター部です。
ステアリングは、パッと見ただけで惹きつけられる魅力があります。
パンチングレザーが使われて、手に馴染む実質的なメリットとともに見た目も落ち着きがあります。
プジョーのライオンマークと、下部にはクロムパーツが使われています。
特に下部のクロムパーツの剛性が非常に高いです。
薄っぺらいクロムパーツを貼り付けただけの車とは全く違います。
このように、パーツパーツが非常に質感が高い物が使われているうえで、
口径が小さく作られているものだから、もの凄い「凝縮感」を醸し出します。
ステアリングは今やパワーステアリングが常識なのだから、
従来の大きさは必要なくて、小さくした方が操作が楽になるという
プジョーの主張は非常に理にかなっていると思います。
小口径ステアリングの操作は楽だけれども、操作に対する反応も自然で、
操舵感は軽いのだけれど違和感を感じるところまでは行かず、良いと思います。
交差点の右左折時のシフト操作と同時のステアリング操作も自然にできます。
小さなステアリングの上方に設置されるのが計器盤。
大きな回転計と速度計が並び、左下に水温計、右下に燃料計、
中央には速度のデジタル表示他のディスプレイという構成です。
最近はこの計器盤を全面的に液晶ディスプレイに置き換える車も増えてきましたが、
プジョー208は従来通りの機械的な計器盤になっています。
ただ、液晶ディスプレイを使った表示の方が見やすくなるとは限らず、
この機械的な計器盤でも視認性が高ければ全く問題ありません。
そして208の計器盤はもちろん非常に見やすいです。
写真では計器盤がインパネから盛り上がっているので、
視界を塞いで見にくいのでは?と心配する人もいるかもしれませんが、
そもそもインパネのボリューム自体がそんなにないので、
そこから多少盛り上がっても運転に支障はありません。
そしてこの計器盤の一番の特徴は、他の車がステアリングの中を通して計器盤を見るのに対して、
208はステアリングの上から計器盤を見るという点にあります。
と説明されて初めて気が付くほど、208の計器盤は新しいのにも関わらず違和感が全くなく、
前方視界からの視線移動が少ないというメリットをもたらします。
というか、前方視界の中に計器盤が溶け込んでしまうような感覚です。
センターメーターもステアリングの中を通さないタイプとしては同じですが、
斜め左下を見なくてはいけないし、斜めから見ることで計器盤が正確に読めないこともあります。
208のコクピットを見て、そこにあるものは
小口径ステアリングは運転者の操作負担を減らすため。
上方に張り出した計器盤は運転者の視線移動を減らすため。
どちらも「人間工学」的であり「ヒューマンコンシャス」的な思想に根差した革新であるということ。
しかし、そこには高精細ディスプレイであるとかグラフィック演算マシンであるとか
多数の検知センサーであるといったデジタルデバイスは何ら使われていないのです。
デジタルデバイスの進化を取り込んで性能を上げていくことも大切。
しかし一番大事なことは、求められているものの本質を見つめなおして、
それに対して根本的なソリューションを提案して実現していくことであって、
その手段は新しいデバイスであれ旧来からあるデバイスであれ関係がないと思います。
従来になく革新的でありながら、運転が楽になって、それでいてデメリットもないというコクピットを
旧来からあるデバイスを焼き直して実現させた208は、やはり素晴らしいと思います。